風の谷のナウシカ
宮崎駿
アニメージュコミックス 全7巻
愛情度、推薦度は10段階評価 萌え度は最大100%
愛情度 |
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Blueberry 88% |
言わずと知れた超有名アニメ映画製作会社スタジオジブリの、これまた嫌んなる位有名なデビュー作『風の谷のナウシカ』の、またまた説明するまでもない大監督・宮崎駿によるコミック版。
映画と漫画、どちらが原作かは現段階では掴めていないのですが、内容的にはこちらがトゥルーではないでしょうか。
なにしろ映画版は、コミック版で言うところの2巻途中あたりまでで終わってしまっているのですから。
展開に相違点はありますが、大筋は同じです。
しかし、その相違点ゆえに物語の持つ意味は大きく違っているとも言えます。
さらには、映画では描かれなかった3巻以降のストーリーが、両者の差を決定的なものにしています。
これは、ナウシカであってナウシカでない、全く異なるストーリーです。
映画と漫画、両者の詳細な比較はまたの機会に譲りましょう。ここでは極力簡潔なレビューにとどめます。
『火の七日間』と呼ばれる大戦争の末、奇怪な蟲を住まわせ、毒の瘴気を撒き散らす不気味な森――腐海に飲み込まれようとしている世界。
蟲と語る風使い、辺境の小国
風の谷の族長の娘ナウシカ。
腐海の側で腐海と共に生きる術を持つ彼女は、父の跡を継ぎ、充分人々を率いる事ができるまでに成長していた。
そんな中、ナウシカは、大国トルメキアの謎のペジテ市侵攻に遭遇する。
ペジテの姫ラステルは、ナウシカに『秘石』を託し、息絶える。
ペジテを一夜にして陥落させたトルメキア軍を率いるのは、美しく、智謀に優れたトルメキア第四王女、クシャナ。
軍を率い、風の谷に現れたクシャナの目的は『秘石』だった。
師・ユパの助けによりなんとかその場は収めたものの、トルメキアはさらに隣国土鬼(ドルク)へ侵攻。トルメキア戦役が勃発し、ナウシカは戦争と、世界の謎を巡る争いの渦中に巻き込まれてゆく・・・。
土鬼(映画ではペジテ)の差し金による王蟲の群れの暴走を収め、風の谷を救うまでの流れはほぼ映画と共通です。しかし、本番はその先。
子供の王蟲を傷付け、囮にする事によって群れを操っていた土鬼。しかし、どうやってその王蟲を捕らえたのか?ナウシカはその謎を追っていきます。
もともと明るい話ではありませんが、共通部分を脱してからは、これでもかとばかりむなしい戦争が描かれ、さらに退廃的なムードに。
王蟲の暴走を超える猛威『大海嘯』。ナウシカが危惧するその可能性が、いやが上にも絶望感を煽ります。
確実に崩壊に向かう世界の中で、しかしナウシカは徐々に、土鬼や秘石の謎すら包括する、世界の謎へと迫ってゆきます。
腐海に隠された意図とは。生命の尊厳とは。
最後に待つものは、あまりにも――
あまりにも残酷な真実。
個人的には映画よりこっちのほうが好きです。アクションではやっぱり負けますが、説得力がある結末だったと思いますし、考えさせられました。
しかしこれ、初めてアニメージュに載ったのが実に20年前なんですよね。宮崎氏が最初からこのラストを考えていたんだとしたら、大した先見性です。
そして、何気にポイント高いのが多くのサブキャラです。
いくらか見せ場が増えたアスベルもそうですが、こんなのは小物。
アスベルを喰う勢いのマニ族の少女ケチャとか、いいとこ取りの僧正様とか、いい味出してるチヤルカとか、実は重要キャラのチククとか、鮮烈な印象の神聖皇帝&ヴ王とか、おいおいおいアスベルの立場がないだろ!(笑)の森の人セルムとか全部オリキャラですしね。
ユパ様はより一層の大活躍。ミトもかなり出番貰ってます。
さらに、クシャナ・クロトワのトルメキアコンビはほとんど新キャラです。映画とは比較にならない出世振り。映画のクロトワには不満があったので、嬉しい限りです。
最後に謎解きのヒント。反転して読んでください。
『何故あの世界の人間は普通に腐海の側で暮らしていられるんだろうね?』
そんなわけで、最近良く本屋で見かけますので、気になったら是非御一考を。
2002/12/27 Moriyan