斬魔大聖デモンベイン

Nitro+

 斬魔大聖デモンベイン。ロボットモノであります。

 この時点で興味持っちゃう人にこの あたりのムービーを見せれば、まあ大体この作品の面白さはわかっちゃうんじゃないかと思うんですが、そんなのアイデンティティクライシスもいいとこなんでもちっと突っ込んだ話しますね。

 この台詞回し一つ、CG一枚からにじみ出るカッコよさ、その源泉は一体なにか。それは「ヒロイズム」というものへの深い理解です。

 ヒーローとはなにか。正義の味方とはなにか。僕らが憧れる存在とはなにか。僕はいわゆるヒーローモノが大好きだけれど、前記の質問に充分な答えを持っていません。
 しかし、デモンベインにはそれがある。欲しいところを絶妙に押さえてくれるんです。まさに望んだ通りの展開に出会えたとき、僕は「わかってるなぁ」という感慨を禁じえませんでした。

 すなわち、それは鉄人28号の昔から積み重ねられ磨き上げられてきた、ロボットのヒロイズムの解体再構築です。悪への義憤は間違ったものを見過ごせない心情として、守るべきヒロインは支え救うべきヒロインとして、「強いもの」の不屈は「弱いもの」の不屈として、それぞれ再構築されています。そして、外道もて外道を狩るものという、輸入物のダークヒロイズム。踏襲ではない、踏まえ、それを超えるものとして生み出されたもの。それがデモンベインです。

 さらに、そこに味付けとして魔術・クトゥルフ神話・女の子の単体でも充分成立しうるエッセンスが加えられ、完成したのはこんな化け物作品だったわけですよ。かーたまんねーな!このごった煮を一つの作品としてまとめ上げる器の大きさが、2000年あたりからシナリオゲーのスターダムにのし上がってきたNitro+やTYPE-MOONの魅力でしょう。

 とにかく、各要素が濃い濃い。主役ロボたるデモンベインのCGだけでもぶっ飛びそうにすごいのに、等身大レベルでも大興奮のバトルを繰り広げられたらこっちはまったくどうしていいやら。アルはすげぇ萌えるしな!僕もエロゲーマーですし、ちちゃーい娘はまあそれなりに好きなわけですが、やべえ本当にロリコンになっちまうかもしれんと思ったのは初めてですよ!やべーって!

 そして、主人公大十字九郎のヒーローっぷり。いくらアルがかわいくてデモンベインがかっこいいとはいっても、やっぱり最終的にこの作品の面白さを支えているのはこれです。
 彼は鋼鉄のヒーローではないんです。普通の人間なんですよ。その価値観も精神も、超人的な戦いぶりから考えれば遥かに常人に近い。しかして、そこがこれほどまでに見るものの胸を揺さぶる要因。
 彼は諦めない。徹底的に諦めない。負けても負けても諦めない。傷付いてボロボロになっていろんなものを失っても諦めない。その道のりは誇りに満ちたものでありながら長い長い苦闘であり、にもかかわらずその先を目指して歩むことをやめない。
 ……これだけのことが、どうしてこうも心を熱くさせるのか!もう僕久々に熱い感動で涙流しましたよ!やった人はわかると思いますけど、あれな!ティベリウス倒す前のとこな!もう本気で前見えなくなったって!悲しいとこじゃないのに!

 しかしながら、長所と短所は表裏一体、なんですよねぇ。これだけ中身ぐっちゃぐちゃの風呂敷をなんとか畳みきった手腕は褒められてしかるべきですが、やっぱりそこここに歪みが出ちゃってます。
 例えば、CGとテキストの不一致。派手な割にちぐはぐな演出。シナリオの誤字の多さ。微妙にプレイヤー置いてけぼりな急展開。すべて素晴らしい素材に調理の手が追い着かなかったゆえの出来事でしょう。もっとも、これはエロゲーメーカーの事業規模を考え合わせれば仕方のないことというか、むしろ大幅な延期もせずによくやったと言ってもいいくらいでしょうか。とにかくこれはある程度仕方のないことなので、3月11日発売のPS2版『機神咆吼デモンベイン』に期待したいと思います。


グラフィック:A

 立ち絵、一枚絵、背景、システムグラフィック、おまけにムービーに至るまで美麗そのもの。特にロボットCGのデタラメなクォリティはもはや狂気かと。一部明らかに違う人が描いてる絵があったり、えっちのときアルの目が怖かったりするんですが、それで文句つけるのはちょっと気が引けます。

音楽:A

 歌もBGMもトップクラス。熱いです。特典歌に惹かれてサントラ買っちゃったし。

システム:C

 基本的にはそこそこいいシステムだと思うんです。スキップ早いし、シーンスキップあるし、セーブ周りは豪華だし、システムグラフィックも綺麗だし。ただね、バックログがクソすぎるんです。ホイールで戻れないし、ctrl+Mで出しても重いわ見づらいわ。声も出ないし。ここだけは海より深く反省してもらいたい。

実用性:C

 まあ、それなり。しかし、ページモンスターえっちが一番抜けるってどういう話だ。
 でも、シーン自体の質は高いですよ。特にアル。見るたびにロリコンレベルが上がってゆく。

ボイス:A

 豪華すぎる声優陣。一体なんの不満があろうかっ。特に敵方は神々しいメンツが揃ってまして、逆に心配になります。マスターテリオンとかね。緑○光?いやあ、いい声です。あとナイアさんとか。

キャラ萌え:B

 アルが。もうこれはアルに尽きますよ。シナリオとキャラクター性を絡めて書くやり方は高橋龍也以来エンタメ系ライターの間で脈々と受け継がれてきた技なんですが、これはその一つの極みですな。逆に、他のキャラはいまいちピンとこなかった。まあ、デモベはアルの話だからこれでいいんでしょうが。

演出:D

これがなー!とにかくビジュアル面がガタガタ。一枚絵とテキストの不整合、ムービーが入らない必殺技シーンのしょっぱさ、必要なところに一枚絵がない、などなど。素材はよかったんだからもうちょい頑張って欲しかった。

シナリオ:S

 諸君、私はロボットが大好きだ以下略ーなシナリオ、というわけでは必ずしもないです。むしろ中心になって描かれているのは正義の味方であり、ヒーローです。マスターオブネクロノミコン大十字九郎。その生き様は、僕らが本当に憧れたヒーローだったと思う。ここまでに見るものの心情に擦り寄ったヒーロー像を僕は他に知りません。もうとにかくカッコいい。刮目しやがれ。

関連リンク
プレイ当時の日記

Nitro+(製作)
機神咆吼デモンベイン(PS2版)
STROWBERRY CLUB特集ページ
戦場には熱い風が吹く(シナリオライター鋼屋ジン氏のサイト)
レビュー

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