D.O.
加奈〜いもうと〜で鮮烈なデビューを果たしたシナリオライター、山田一が送るハートフルコメディAVG。テーマは「家族」。
■システム:6点
まあ、普通です。メッセージウィンドウありのAVG。共通部分での選択によって個別ルートに分岐しますが、好感度が足りないとバッドエンドに。ちょっと難し目に感じました。
個人的にはオートクリックの速度調節ができないのと、非アクティブウィンドウ時にスキップが止まるのが気になりますが、おおむね必要な機能は揃っています。スキップは既読未読の判別が可能。Hシーンの回想もあり……ですが、欲を言えば他の重要なシーンの回想も付けてほしかったなぁ。セーブ数は27個と充分な数なので、イイところでセーブしておくのが吉。共通シナリオにも名シーンは多いです。
ちなみに、回想・BGM演奏などのおまけ機能は誰かクリアすると使えるようになるんですが、それ以外にも一人クリアごとにメニュー画面に変化が。粋な演出です。
■グラフィック:7点
原画は福永ユミ。好みじゃないですがかわいい絵柄です。ただ、たまに顔の形が変だったりして、技術的には不満も残ります。塗りのレベルも高いですが、若干白味が強すぎるような気が。実はグラフィックはあまり好みに合わないんですが、綺麗は綺麗なので7点で。
■音楽:7点
音楽はI'veが担当。曲自体はいまいちでもBGMとしては一級品という、良くも悪くもI'veらしさが出た曲群です。個人的にはピアノやクラシックギターの曲は好きですが、安っぽい電子音が入るとどうも……好みの問題でしょうか。
しかし、OP・EDのボーカル曲は秀逸。作品との強い結びつきによる感動補正に加え、曲自体もまあまあ。僕は歌だけでも泣けます。
■Hシーン:7点
絵にも文にもいやらしさがないので、正直オカズにするには難アリです。ですが、ストーリー系の作品にありがちな何の脈絡もなくおっ始めてしまう不自然さが少ないのはいい。(ちゅん子は正直不自然ですが、脈絡はあります。)陵辱ゲーとかは別にして、これほどにHが必然と思える作品は初めてです。キャラごとに回数が違うのも、ご褒美として都合のいい場所に配置しなかった結果でしょう。特に青葉との行為はそういう意味では最高のシーンでした。これほど結ばれるのが必然と思える男女を、僕は見たことがありません。
……でも、もうちょっとえっちぃとうれしかった。
■キャラクター:8点
各キャラクターのキャラ付けは、現在より、むしろその背景となっている過去に拠っています。さらに、家族がテーマだけに、集団の中での個人、関係の中での個人を描こうとしているフシがあり、萌えヂカラはやや弱目かと。とはいえ、それでキャラクターの魅力が損なわれるわけでもありません。それぞれに自分の抱える問題を解決していこうとする姿は間違いなく魅力的です。準なんかかなりおいしい設定の持ち主ですし。脇を固めるサブキャラたちもそう。景に小夜、劉に楓、そして寛(こいつはメインかもしれませんが)。誰も彼もシナリオの一本くらい書けそうです。
さらに、主人公の名前は沢村司で固定。コテハンです。グッド。とはいえ、感じとしては無人格主人公と人格アリ主人公の間くらいのもんだと思います。プレイヤーの投影なのか登場人物の一人なのか、やや中途半端に感じられました。あるいは、意図的にどちらにも取れるようにしているのかもしれませんが。しかし、たまに人格を表に出した彼はなかなか素敵。
■ボイス:なし
なくても気にはなりませんでしたが、会話が主体で進むのであった方がいいかもしれません。
絆箱を買うので、そのときに。
入手。そのうちレビューします。
■シナリオ:9点
ええまあ、共通シナリオが長いとか、個別シナリオがローテンションすぎるとか、言いたいことはないでもないんですが。
ものすげぇ泣けます。
とりあえず、家族計画発動前から一回泣きました。発動後にも一回泣きました。個別ルート入ってからも当然泣きます。ぐっとこらえた回数なんて数えるのも馬鹿馬鹿しいです。涙腺壊れるかと思いました。
普段はコミカルなんですが、たまにこう、泣かせどころが入るともう、駄目で。しかも、劉さんとか伊佐坂さんまで泣かせにくるんだもんなぁ。もう、駄目。
大体ネタが良すぎるんだよなぁ。家族だけでもお腹いっぱいだってのに、春花の○○とか、青葉の秘密とか、準が○○だとか……ってネタバレなしじゃなんも書けねぇよ畜生!そりゃこのネタで泣けねぇってこたないわ。捌き方というか、表現にはいくぶん隙があるんですが、こんだけいいネタ揃えてればねぇ…。山田氏は妹+病気という反則技を編み出した人物でもありますしね。
全ルート泣けますが、特に青葉と準のシナリオはそれはもう泣けます。青葉のときはラスト30分くらい泣きっぱなしでしたし、準のときはエピローグで嗚咽が漏れました。マ ジ で 。 袖がびしょびしょになったんでタオル使いました。
ただ、当然好みの問題はあるでしょう。奇跡が好きな人には向かないかもしれません。そうだなぁ、結局人間ドラマなのかなぁ。「人間」に価値を見出す人には、きっと面白いと思います。
■総合評価:9点(傑作)
本当は10点付けたいです。それくらい僕には衝撃的な作品でした。
僕の中では、家族計画はKanonへのアンチテーゼの一つとして位置付けられています。Key作品もしばしば家族を扱っていますが、その点では「家族を作る」という異なる切り口からこの難しいテーマを骨までしゃぶり尽くした家族計画に僕は軍配を上げたいと思います。
できれば、Kanonの後にこの作品をプレイして、どちらがより自分が望むものに近かったか、比べてみて欲しいと思います。僕は断然家族計画でした。加奈とも比較してみたいですね。
とにかく、準のラストで泣けなきゃもう僕とは完全に価値観が違うと言わざるを得ません。僕と趣味が似てるかも?と思った人は迷わずプレイして下さい。これを知らないのは人生の損失です。