みずいろ

ねこねこソフト







 手厚いユーザーサービスで知られるねこねこソフトの出世作。“普通のエロゲー”を公言し、普通を目指した意欲(?)作。





■システム:6点

 フリーウェア・NScripter使用……っておいおいおい。確か月姫のところでも同じこと書いた覚えがあるぞ?

 まあ、別段困ることもないし、下手な独自システムよりよっぽど機能も安定性も優れてるからいいんですけど。でも¥8800だしなぁ。







■グラフィック:5点

 まあ、そこそこ。立ち絵は塗りが独特でギザギザも目立ちますが、基本的には及第点。

 が、しかし。麻美の一枚絵はいただけない。別えちぃの雪希も。メイン原画の秋野さんと絵柄が違うだけでも僕はイヤですが、それよりなにより下手すぎる。さらにその非秋野絵のほとんどが、よりによって麻美に集中しているんだから許しがたい。(そうだよ、私怨だよ!)複数原画制が絶対に悪だとは言いませんが、こんなんが出てくるようじゃあ何年かかってでも一人で全部描いてくれ!と言いたくなります。あまりにショックだったので2点減点。







■音楽:7点

 インパクトがあり、感動補正もかかりやすいボーカル曲。曲自体は微妙でも場面によくマッチするBGM。I'veくささプンプンです。いや、全然OKですが。

 BGMはI'veにも増してチープで、あまり好きになれません。しかし、OP曲「水色」と、そのオルゴールアレンジ「オルゴール」は非常にいいです。なんというか、そんなにいい曲だとも思えないのにやけに涙腺にクるものが……。浸透力があるとでも形容すればいいんでしょうか。ぐいぐい押してくるのではなく、あくまでも淡く、すっと耳に入る感じ。僕がプロローグから泣かされたのは主に「オルゴール」のせいです。
 実に「らしい」曲だといえるでしょう。





■Hシーン:6点

 本編とは別にえちぃ専用シナリオがあるので、本編でのHはないも同然。豪快に開き直ったやり方です。反則といえば反則ですが、効果的なのでいいでしょう。

 で、肝心の別えちぃシナリオですが、かなり変態入ってます。コスプレはともかく、媚薬で自慰強要をやるとは思わなんだ。ただ、それでもH度はそんなに高くないです。




■キャラクター:7点

 「普通」を目指した結果かあるいは意図的か、キャラの記号化が著しいです。まず「ぽんこつ幼馴染」「しっかり者の妹」という主人公に対する位置づけなりかかわり方なりがあった上で肉付けをしていっているような。それが必ずしも悪いとは思いませんが、人格性が薄い気はします。リアルっぽさが足りないというか、血肉がないというか。

 とはいえ、キャラ自体は確かに魅力的です。日和・雪希が人気の双璧を成していますが、個人的に好きなのはその他3人。一番好きなのは当然麻美センパイです。





■ボイス:6点

 微っ妙。キャスティングは雪希の綾川りのさん以外は違和感は感じませんでした。そのりのさんにしても、最初こそアダルトすぎるという印象を受けましたが、そのうち、むしろこれくらいがちょうどいいと思うようになりましたし。

 ただし、演技のレベルは麻美・進藤以外は及第点かそれ以下程度。言い方は悪いかもしれませんが、アイドル声優ってことでしょうか。声がイイのはわかりますが、演技力が欲しい僕としてはやや不満。麻美役の堀奈生さんはかなり上手いですけどね。この人はチーム「みずいろ」では別格です。これはひいき目じゃなく。むしろ、声がいいから好きっていう因果関係ですし。

 あと、録音機器の問題が、随所で声が荒れてたように感じました。雪希が多かったような…。単に声が割れただけでしょうか?





■シナリオ:7点

 幼少期パートでの選択によって攻略対象と現代パートの状況が変化するシステムをまずは評価したいと思います。これまたかなり思い切ったアイデアで、インタラクティブ性は無きに等しいです。しかし、その代わりに分岐型AVGをやるときもっとも気になる各シナリオ間の齟齬を全く起こさず、大幅に展開を変えることを可能にしています。要するに全然違う話を5本書いたというだけで、言われてみれば簡単な話です。しかし、今までなかったアイデアであることも確か。コロンブスの卵です。
 進藤シナリオは、このシステムを最大限に活用した面白いシナリオになっています。ぜひとも最初にプレイしていただきたい。

 さて、一通り褒めちぎったところで、肝心の中身について。

 「普通」がテーマのこの作品、当然ながらシナリオも普通。特に大事件も起こりませんし、主人公のアイデンティティの危機とかもありません。超常現象も(ほとんど)起こりません。しかし、安易にオカルトに頼らない作劇には好感が持てますし、「普通」にもちゃんとひとひねり加えてあります。先の進藤しかり、雪希しかりです。ただ単にギャルゲーの最大公約数的なキャラとシチュエーションを持ってきているわけではありません。それでいて基本線はあくまオーソドックスなわけで、王道の料理にちょっと変わった隠し味、という感じ。およそ大外れの心配はないと言っていいでしょう。

 ところが、これが意外と面白くならないんですね。これだけ面白くなる要素が揃っているにもかかわらず。よく見る評は、あまりに普通すぎるため、といったものですが、僕は単なる筆力不足ではないかと思います。

 素材もレシピも悪くないんです。悪いのは料理人の腕。切れ味の悪い語り口、妙に詩的な表現、リズムの悪い展開が、素材の魅力を大幅に減じています。ネタがつまんなきゃあ気になるほどでもないんですが、これだけのネタ、もっとうまく料理できなかったのでしょうか。

 その点、割といい感じなのがディレクター兼任の片岡とも氏が手がけた日和シナリオです。これに限っては単純な日本語のうまさで見ても悪くなく、するとやっぱり面白いんですよね。
 ところがこれ、「普通」というみずいろのテーマからもっとも遠いシナリオでして…。世の中というのはうまくいかないものです。



 なんだか悪く書いてますが、評点は7点あるわけで……。面白かったです。日和シナリオではボロボロ泣きましたし。しかし、いや、だからこそ、もうひと頑張りして欲しかったんですよ。







■総合評価:7点(良作)

 うーむ、もうちょっと行くと思ってたんだけどなぁ。主なマイナス要因は、混入してる一段レベルの落ちる絵とシナリオの微妙さですね。

 そう、微妙。このゲームすごく微妙。もうちょっとしっかり作り込んであればさぞ面白かったろうと思うんですが…。新参メーカーの未熟さが出たということだったら次回作以降に大きな期待が持てます。逆に、次回作以降もこのクォリティが続くのなら……僕の愛するねこねこソフトもその程度ということでしょう。

 僕はまだ、ねこねこソフトというメーカーのファンであって、その作品のファンではありません。日本一ユーザーに優しいメーカーの今後の奮起を期待します。












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