サフィズムの舷窓

ライアーソフト


 日本で一番アホなゲームを作るメーカーの一つ、ライアーソフトの第4弾作品。

■システム:5点

 環境設定こそおおざっぱですが、操作系はしっかりしており、感触は良好。インターフェースも綺麗です。音量調節ができないのだけは頂けませんが、BGMとボイスのバランスも好みだったので必要ありませんでしたし。

 ただ、インストールできねぇのは困るんだよねぇ。

 XPだとできないのかな?修正パッチすらないため、手動コピーで起動するハメに。声を出すにはさらにもう一工夫必要で、sapphismフォルダの中にvoiceフォルダを入れておかねばなりません。これは僕の環境での話なので万人に当てはまるとは限りませんが、いずれにせよめんどいのは確か。せっかくの良好な操作感もプレイできなきゃないのと同じ。作品として評価することはできても商品としては失格です。僕自身は多少の苦労はいとわないのでこの程度ですが、人によってはもっと大きなマイナスになるでしょう。

■グラフィック:7点

 普通、絵のえっち度というのは、肉感的な絵ほど高いと思われます。もっとも、つやつやのアニメ絵じゃないと抜けない人もいるかもしれませんが。

 原画にせよ彩色にせよ、この作品の絵は肉感に欠けています。じゃあエロくないかといえばそうでもなく、異なる方向性のエロチシズムを醸し出しています。すなわち、耽美。柔らかそうな質感でではなく、シチュエーションと雰囲気で盛り上げるえちぃですね。着衣が圧倒的に多いのもそのあらわれでしょう。

 彩色はなかなかのレベルですが、原画は粗さが残ります。立ち絵は非常にいいし、枚数もそれなりにあるんですが、一枚絵の中にはやや見苦しいものも。尺が長くないとはいえ枚数的にもやや不足かもしれません。

 また、背景はなにげに綺麗です。

■音楽:7点

 雰囲気作りに気を使っているこの作品、BGMも立派な功労者です。音楽を手掛ける雑音工房NOISEはハードな曲調が持ち味ですが、今回はきっちりムーディーに仕上げてきています。偉いですね。ただ、その分パンチに欠けるのは否めません。また、OPテーマはライアー伝統のネタソング。ムービーがまたいい味出してるんだなー、これが。

 ちなみに、音楽ディスクをCDプレイヤーに掛けると小ネタが聞けます。

■Hシーン:7点

 このゲームの最重要ポイントにして人によっては最大の壁。

 全部レズです。

 まあ、女性しか出てこないんだから当然といえば当然ですが。責め受けははっきりしていて、基本的にレズの王子様こと主人公・杏里がタチ、相手がネコという形です。愛人が6人もいるくらいですしねこのアマ

 そんな感じで、雰囲気は割とライト。全体的に女子高ノリで(事実女子高ですが)なんとなく空気がゆるいので、あまり他の恋愛ゲーのごとくえっちの度に大騒ぎはしません。やってることもさほどハードではないですし。

 ただ、先程も言ったようにシチュエーションでヌくゲームなので、軽めの行為ながら実用度はそこそこ。まあ、あくまでそこそこですが、なにもしないで眺めてるだけでもけっこう楽しかったです。クローエとか。

■キャラクター:8点

 立ち絵持ちのギャルは計15人、内訳は主人公・親友・ヒロイン×3・子猫ちゃん×6・後輩×3・先生。その出身国は欧州を中心に14ヶ国。国際性豊かなラインナップです。といっても、直接のお国ネタは公式サイトの杏里の挨拶以外には大してないんですが、各キャラクターになんとなくお国柄が出ているのが面白いところ。コロンビア出身アンシャーリーがヤク中とか。

 そのアン、脇役に過ぎない子猫ちゃんズの一員なんですが、これがまたいいんですよ。アンはヤク中なのでどうでもいいですが、他の子猫ちゃんたちは脇にしておくのが忍びない逸材揃いです。だって俺、メインヒロイン3人よりニコルとかイライザとかニキとかの方が好きだもんな。アン以外は一本シナリオ書けそうな背景がありますし、個人的には子猫ちゃんとの馴れ初めあたりの話が読んでみたいです。

 主人公も実に濃いキャラです。なんせレズの王子様。立ち絵はあるわボイスはあるわ入浴シーンはあるわ、XX染色体を盾にやりたい放題です。かけらも萌えませんが、なかなか好きですねこいつ。確かにもてそうだし。

 さらに、探偵役のかなえさんがこれまた実にいい味を出してまして、僕はこの人が一番好きだったりします。攻略不可だけど。まあ、専用ルートこそないもののアルマルートではかなり目立ちますし、それなりに堪能したんですが……Webであれだけ使ってたコーヒー切れネタがないし。

■ボイス:6点

 んー、微妙。フルボイスでないのが寂しい気がするものの、全体的に演技はマトモ。なんですが、杏里だけが下手なんですよね。飛び抜けて。テキストのテンポがいいこともあり、かえって鬱陶しく感じることも多いです。最初インストール失敗して声なしでやってたんですが、全く気になりませんでした。杏里の声さえマトモならなぁ…。こいつはよく喋る主人公ですから。

■シナリオ:7点

 まあ比較的短いですし、そんなに深い感動はありません。ですが、3週間という日数にしてもプレイ時間にしてもさして長くない期間の中に一本のストーリー+αをきっちり詰め込んでいるのは見事です。その上ルートが3つしかないにもかかわらずキャラクター全員がちゃんと立っており、こういうのを見ると短くする技術って大事だなぁと思いますね。

 なぜそれが成立するか。不必要なものをことごとくカットしているからです。例えば推理。主人公は推理をしません。かなえさんがやります。おかげで主人公はおにゃのこといちゃいちゃしたり面倒を見たりに集中できます。例えば子猫ちゃんたちの専用シナリオ。最初から愛人です。おかげでいきなりえっちしたり踏み込んだ展開に持ち込んだりできます。例えば壮大なテーマ。ないです。おかげで純粋に物語の展開だけを楽しむことができます。小粒ではありますがいいシナリオです。

 総合的に一番よかったのはアルマシナリオでしょうか。キャラクターとギミックがうまく噛み合っています。

■総合評価:7点(良作)

 エンターテインメントをする上で重要なことの1つは、客に余計な労力を強いないことです。この作品はそういった正しいサービス精神(余計なものをゴチャゴチャくっつけることではなく)が、シナリオからもシステムからも感じられてよかったです。バグは……ライアーだし(えー

 ライアー作品といえば作品全体のテイストが魅力であるようなイメージがありますが(あるよね?)、これは多分にキャラゲー的な面があるので、萌えられるか萌えられないかは割と大事そうです。

 よくできたエロゲーってこういうののことじゃないんでしょうか。


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