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Diary/2005-09-22

[エロゲー]『Fate/stay night』はセカイ系か

 考えてみると興味深いテーマだ。kagamiさんがFateのセカイ系性に言及する中であやかしびとと比較している。あやかしびとを考えるときにTYPE-MOONについて考えないわけにいかないので、俺も両者の関係については考えてみたのだけど、俺はあやかしびとの「そういうところ」はTYPE-MOONの遺産だと思う。

 エロゲーというのは、「女の子を選ぶ」ことで物語が分岐する構造を持つ。また、主人公が視点人物となるので、プレイヤーの感情移入を妨げぬよう、主人公の個性は薄くなる傾向がある。自然、分岐した物語は選んだ女の子の物語となり、その中で問題が起こり、主人公=プレイヤーがその解決に手を貸すのが基本パターンとなるわけだ。ゆえに、ここでは主人公がヒロインにコミットする。
 しかし、『月姫』の主人公たる遠野士貴はプレイヤーの無個性なマリオネットとは言いがたい。強力な超能力を持ち、物語に自らの「主義」をもって相対する「主体」である。関連作品では顔も出る。これには各ヒロインのルートを全て見ることによって作品の全容が明らかになる、ミステリ的な、ルートごとに物語を分断しないシナリオ構造も一因しているのだろうが、まあそれは措いておく。士貴は自らの「物語」を持っている。『月姫 PLUS-DISC』収録作品の「閑話月姫」に、「遠野士貴本来の運命は遠野家ルートより」というような記述があることからも、そのことは知れる。ではなぜ月姫のメインルートはアルクルートなのかというと、アルクェイドが士貴に出会ってしまったからだ。ヒロインが主人公の物語に影響するという命題が、ここに明示されている。
 月姫の本編は士貴と「先生」が出会うエピソードから始まる。先生は士貴の人格形成に深く関与している。先生は攻略対象となるヒロインではないが、奈須きのこの未発表の過去作品『魔法使いの夜』の主人公であることが明らかになっている。先生にもまた自らの物語があるわけだ。
 また、月姫にはヒロインが主人公を案じる描写が非常に多い。大部分、AVGとしての(プログラムとしてでない)ゲームシステム上の制約によって、実際に行動に移されることは少ないが、それはヒロインから主人公へのコミットの意思である。「自→他」の影響があるように、「他→自」の影響もまた存在することになる。(ここで「自」に恋人が含まれるかはすっげえ微妙なところ。なので突っ込まない。)

 セカイ系の代表的な作品である『最終兵器彼女』と『イリヤの夏、UFOの空』を比較してみると、前者に比して、後続の『イリヤ』のほうが、他→自の影響を排除する形で純化していることがわかる。『最終兵器彼女』においては、過去にも現在にも、シュウジとちせに(男女として)関わるキャラクターが登場する。対して『イリヤ』における須藤晶穂の影響力はなきに等しい。たぶん『ほしのこえ』もそんな感じじゃねえかな、見てないけど。

 翻って、『月姫』はその他→自の影響の顕在において特徴付けられるといえる。これは同時期の、歴史上近い位置付けの作品と比較してみればいっそう顕著で、例えば『Phantom of Inferno』におけるヒロインは主人公が選択する運命として以上の意味は見出しにくい。また、主人公も犯罪組織の殺し屋という属性を除けば比較的没個性といえる。

 これがFateになればその傾向はなお著しい。問題の桜を除いた2人のヒロインが単に選択される運命以上の意味を持つことは明らかで、特に凛は個別ルート以外でも大きな役割を負っている。また、士郎の人格形成に良くも悪くも多大な影響を及ぼした義父・切嗣の存在があり、偽妹・イリヤに端的に見られるような感情の交錯がある。もう今更ネタバレを気にする必要もあまりないだろうから言ってしまうが、アーチャーの存在が先の命題を裏付けしている。桜ルートに関してはFateとかセカイ系とか伝奇とか(Fate激バレ)を参照のこと。

 俺はこの軸上に『あやかしびと』を見る。主人公の如月双七はやたらといろんな人に助けてもらっているが、これをTYPE-MOONへのアンチテーゼとして見るとしたらそれは間違いだろう。人間と妖の共存の縮図たるプロローグ、そして神沢市とその周辺状況を見ればFateの関係性の世界はいかにも粒子が粗いが、それはテイストの違いだと思うなあ。また、物語的な影響力の有無を、物語内における実際的Power――体力とか魔力とか超能力とか権力とか、そういうもののあるなしと関連付けて考えるのも意味があるとは思えない。なにしろこれは恋愛ゲームであるからして。そりゃ、弓塚さつきの存在をどう考えるかということ。さっちんの物語上の影響力に吸血鬼かどうかはあまり関係ない。

 というわけで、Fateとセカイ系は似て非なる、と思うんだよなあ。

[雑談]セカイ系の世界ときみとぼく

 俺は伝奇とセカイ系の共通点を「個人が物語を背負う」ところに見る。が、ここで問題なのはセカイ系にとっての世界が「きみ」なのか「きみとぼく」なのかということ。定義できる話でもないのかもしれんが……。エロゲーだったら前者だと思うんだけどね。なぜならヒロイン1人ごとに世界が分岐するからさ。

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