Kanon

Key

ネタバレ考察:その結末の意味



 もはや説明の必要もないほど有名な、Keyブランドのデビュー作です。いわゆる泣きゲーの元祖でもあります。その他にもヒロインの変な口癖やコメディから入ってシリアスに持ち込む展開など、この作品がブレイクして以降一般的になったパターンは数知れず。それだけでもこの作品をプレイする意味はあります。キーワードは"奇跡""夢""願い"。

■システム:4点

 必要最低限のノベル式システム。99年製でもあるし、不満を挙げればキリがありません。我慢しましょう。

■グラフィック:5点

 ……正直、きつい。

 塗りこそマトモですが、原画はかなり荒削り。普段の絵はまあ、まだ我慢の範囲内なんですが、愛を深めるときにヨーガするのはどうかと思わざるを得ません。技術的には下の上から中の下といったところが妥当でしょう。

 ただ、ミョーな味があるのもまた確か。実際、見ているのが苦痛に近いにもかかわらずしっかり萌えてましたし。なんだそりゃ。やっぱ天才なんかな、いたるさん。

 背景とかは綺麗です。

■音楽:8点

 Kanonは音楽製作集団I'veの名を業界に知れ渡らせた作品でもあります。OP・EDのヴォーカル曲も含めて音楽は押しなべて良質。安心して聞けます。

 個人的には、I've音楽の最大の特長は使われる場面にばっちりマッチすることだと思っています。BGMとしての出来がいいんですね。反面、曲自体のインパクトはさほどないです。(と、思います。)サウンドも薄いですし。こーゆー安っぽいアレンジって好きじゃないんだよなー。今聞くと泣いちゃいますが。

■Hシーン:2点

 一切期待しないでください。するだけ無駄です。シスプリあたりのほうがよっぽど抜けるんじゃないかって程度のエロさです。まあ、わかっちゃいても期待してしまうのが人情というもの、モチベーションも上がるでしょう。そういう意味で前年齢版よりはこちらのほうがお勧めですが、ヌけないどころか萌えもしないので注意。なんか殺伐としてるんですよね、意外に。

■キャラクター:7点

 キャラ立ては巧いですね。あの口癖はどーなのか、どうも反則くさい気がしないでもないですが、まあやったモン勝ちでしょう。うぐぅ。

 他にも好物からトレードマークから決め台詞まで、ありとあらゆる手段を駆使してキャラを立ててます。ここまでされるともはやキャラというより記号のようですが、別に不快ではないのでいいでしょう。

 ちなみに、外見が好きなのは舞、中身が好きなのは栞です。

■シナリオ:7点

 さて、はっきり言って、最初から語るべき部分はここしかないんですよね。シナリオです。

 泣ける泣けると評判のシナリオですが、確かに泣けます。少なくとも僕は泣きました。

 Kanonのシナリオのいいところは、流れのよさです。好感度上げタイプのノベルゲーでありながら、同業他社にありがちな繋がりの不自然さなどもありません。後半、徐々にシリアスモードに入る際も違和感がなく、余計な部分で感動を損ないません。ラスト付近の展開は固唾を呑んで見守るばかり。感動系ノベルゲーの最高峰の一つに数えられる傑作だと思います。


 ………思います……が。


 正直、プレイ後に釈然としないものが残りました。感動しました。泣きました。けど、これでいいのかという疑問はありました。他のシナリオの集大成、Kanonそのものとすら言えるあゆシナリオで、僕は泣けませんでした。好みの問題と言ってしまえばそれまでなんでしょうが…。

 この点は、別に考察を書きたいと思います。

■総合評価:7点(良作)

 グラフィックはともかく、システムとHシーンはかなりひどいこの作品。評価の分かれ目はやはりキャラとシナリオでしょう。

 確かに泣けたけど、手放しで褒めることもできず。結果、これくらい。キャラが若干好みから外れてるのもありますしね。いたる絵で萌えられない人、不思議ちゃんの群れに耐えられない人、非アクティブ時にスキップが止まるのが許せない人、ヌけないエロゲーなんか認めない!という人は大幅に下がるでしょう。その辺は好みの問題。必ずしも万人にお勧めとは思いません。

 まあ、泣きたい人はとりあえずやってみるがよろしかろう。


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