EVERYTING NICE!

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EVERYTING NICE!

Sugar+Spice!って、システム、構成的にかなり凝ったゲームだと思います。変わったゲームだと言っても良い。
女の子って、何でできてる?から始まる女の子の女の子性を魅力として強く打出しているところ、「好きになったら告白!システム」、「オトメカイセキ」などなど。
プレイ体験は非常に楽しかったのですが、何故そんなに楽しかったのかということを考えてみたいと思います。


Sugar+Spice!の特徴の一つとして、「好きになったら告白!システム」というものが
あると思います。
最初にこれを聞いたときに、ノベル型ギャルゲーの自由度の低さというものを問題意識にしてるのかな?と思ったんですよね。ノベルとしての色彩を強めれば強めるほど、ifという形を見せる以外での選択肢、プレイヤーの介入というのは起こりにくくなる。最終的な結末に向けて、文字通り遊ぶ余地が減ってくるんですよね。
そういうものへのアンチテーゼとして、プレイヤーの任意で告白できる、としたのかなと。プレイヤーが自分で好きに主人公動かしたいというプリミティブな欲求をシステムにしたのかということで。


で、実際にやってみてどうだったかというと、ヒロインの個別シナリオに行かなくても楽しいというのが大きくて。
特定のヒロインルートに進まないようにプレイしても、色々とイベントが見られるというのが面白い点だと思うんですよね。
普通、共通ルート→個別シナリオ(パラレル)という構成だと誰のルートにも入らないと半ば強制的に打ち切る形になると思うのです。でも、シュガスパはそうではない。ヒロインに告白成功して彼女になってからも途中までイベント選択型です。つまり、共通ルート1→共通ルート2(彼女イベントあり)→個別シナリオという形になっている。
そのため、共通ルート2の段階(*1)のイベントも共通ルート1の状態、つまりどのヒロインを選んでいない状態であっても結構な割合でプレイすることが出来る。
個別シナリオが誰かと付き合えることによる報酬とすると、それまでの共通ルートってあんまり大事じゃないもののようになってしまうではないですか。
でも、シュガスパって逆にそこまでが楽しくて、告白後もそのままあまり変わらずにシームレスに繋がっている。そこが面白いなと。
ピョンの告白を受けるときのあっけなさとか、感じの変わらなさっていったらないですからね。
つまり、僕にとってのシュガスパの魅力は、告白前後を問わず楽しいことが一因となります。


女の子って、何でできてる?
サトウとスパイス(Sugar+Spice)
─そして、素敵な何もかも─
そんなモノでできてるよ

そして、そのイベント一つ一つを読むのが楽しくしている理由は何故かと考えたときに、タイトルのシュガーとスパイスに出会っていくことではないかと思うんですよね。つまり、未知のものが既知にしていくというプロセスにある期待と不安、何が出てくるか分からないというサプライズ。

シュガスパという作品は、基本的にマップのアイコンを選択してイベントを体験していくゲームです。そしてそのアイコンは外形は分かるけれど、どんなものかは分からない。何かを想起させて、それを実際にやってみるまで未知のままである。そして、やってみて初めて、そのアイコンがどんなものか分かる。
オトメカイセキというシステムがゲーム中にありますが、あれもプレイしていくにつれて、女の子たちを構成している何かが分かっていくというものです。
こういう、未知のものが既知になっていく過程が楽しいのではないかとと思うんですよね。
そして、サトウがでるか、スパイスがでるかわからないというサプライズが楽しい。
メインヒロインである歌の特徴に「ウソ」があるのは、「女の子」している歌の必然だよなーと思っていて。
ウソを使う彼女のことは、基本的に未知であり、そして何が出てくるかわからない。サトウだと思ったものがスパイスかもしれないし、スパイスかと思ったものがサトウかもしれない。そういう、こちらを期待と不安で煽るのが、彼女の魅力、シュガスパの魅力ではないか、と思うのです。ラストの"EVERYTING NICE!"でクリスマスをサプライズパーティとして行うのは、シュガスパらしいよな、と思う訳です。


そして、そのラストの"EVERYTING NICE!"
ここで、

高島「この一年で君は、いったん破損したパーソナルを再構築するに充分な経験を得た」
高島「過去の君がどんな人間であったとしても、失われた記憶が戻ろうと戻るまいと」
高島「それらに君の人格が揺るがされることはもはやないだろう」

と語られるのですが、ここで和真がしてきた経験がどんなものかということについて一切分かりません。誰のルートなのかとか、どんなことがあったとかそういった話は全く出てこない。
そして、おそらく誰とも付き合っていない状態として、全員とクリスマスパーティがSugar+Spice!という作品のラストとして持ってこられます。
つまり、シュガスパという作品の本質はここなのではないかと思っていて。

きっちりとした形を持つストーリーではなく、プレイヤーによって選ばれた任意のピースによって構築されたストーリー(仮)。断片を楽しむ過程こそが目的になっているのではないかと。
プレイヤーが見ていないイベントがさも起こったかのように語られるという話があったり、好感度引継ぎシステムがあったりするように、シュガスパという作品はベタに繋げて読もうとすると上手く解釈できない。それはそもそもこの作品がこういうことを主眼にしているからではないか。
だからこそ、この作品は各ヒロインの個別シナリオは存在はするにしろ、さほど比重が高くないのではないかと思います。(*2)


ということで、ストーリーの内容そのものというよりも、構成やシステムからこの作品の魅力についていろいろと考えてみたのですが、やっぱり「素敵な何もかも」を楽しめたので「全て良し」かなと思います。

*1 告白して成功する可能性がある月のこと
*2 個別シナリオの面白さを否定するものではありませんが